平成8(1996)年:日本数学教育学会第78回総会/全国算数・数学教育研究長崎大会発表
2.研究の方法
コンピュータを活用すると言っても、さまざまな方法が考えられるが、ここでは、コンピュータを教える(コンピュータを教えることで教科内容を指導できる場合もありますが)のではなくコンピュータで教えることを主に考えた。
活用方法にも、シミュレーション・ドリル・チュートリアル型等さまざまな方法が考えられるが、ここではシミュレーション型やドリル型を考えた。チュートリアル型は意欲のあるものには効果的だが、ないものにはこうかがないと考えたからである。
次にソフトの入手方法だが、市販のソフト(言語を含む)、自作のソフト、フリーウェア(シェアウェア)の3種類が考えられるのではないか。
市販のソフトではMOVELの一次変換を利用して、宿題で出しておいた猫の絵の変換の正解を確認させた後、いろいろな一次変換を体験させた。また、言語では、BASICでいろいろな曲線のグラフ表示をさせた。プログラムはこちらで用意してプリントに載せておき、生徒にそれを打ち込ませ、そのプログラムを実行させ、いろいろなパラメータを入力し、曲線の変化を確認させます。また、3次元版のロゴ言語である「3D−LOGO」で空間図形の把握を実践した。
自作のソフトでは二次曲線(発表資料,ソフト紹介1・ソフト紹介2)・二次関数(ソフト紹介)・三角関数(発表資料,ソフト紹介)・分数関数(発表資料,ソフト紹介)のグラフを描くシミュレーション的(一般には条件を入力すると勝手にグラフを表示するシミュレーションだが、本ソフトは生徒がグラフになるであろうと思われる点をマウスでなぞらなければ表示されない)なのと画面に表示された直角三角形の三角比を求める(発表資料,ソフト紹介)・因数分解をする(発表資料,ソフト紹介)ドリル的なのを体験させた。生徒が画面を眺めているだけという消極的な参加ではなく、操作をしないと結果が現れないという積極的な参加になるように工夫した。
フリーウェアでは「ごたく」の利用を考えたが無理があり(数式や図が表示できない)、これを参考に前述の「三角比」や「因数分解」を作成した。「ごたく」に出会うまでは、ドリル型もチュートリアル型と同様にあまり効果がないものと決めつけていた。しかし、ちょっとした空き時間やクラブ活動で「ごたく」を活用したところ、生徒たちが一生懸命になって取り組み、かつ、問題の答えを知識として身に付けていく様子から、ドリル型でも作り方によっては効果が上がるのではないかと考え直した。
また、コンピュータで教えるに当たり、使用するソフトの操作方法が難しいと使用方法だけで1時間以上かかってしまうおそれがあるので、出来るだけ操作方法の難しくないソフトを選ぶか自作したつもりである。つまりコンピュータのことは何も知らなくても、それを利用して教科の内容を限られた時間の中で学習するようにすると言うことである。
3.今までのまとめ
コンピュータ授業はおおむね好評であった。その原因を考えてみると「リアルタイム性」にあるのではないかと考えている。普通のプリントだとある程度の人数がそろってからか、または、授業の最後に一括して答え合わせをしたり(自分がやらなくても誰かの解答を写すことが出来る)、宿題だと提出後2,3日しないと結果がわからないが、コンピュータは入力すると即座に結果(正解不正解等)がわかる。高級ゲーム機世代の生徒たちは、自分が行ったことに対して、即座に反応がないと辛抱しきれないのではないか。今後ますます一括処理よりも個人個人の速度にあわせたリアルタイムな個別処理の必要性が高まってくると思う。
しかしながら、普段の授業にも意欲関心を持つようになったとは言い切れない。学習ソフトの利用を考えていく上で、コンピュータ授業と普段の授業の連携をいかに取っていくかを考えていかなければならない。
4.今後の展開
本校の導入台数は24台でDOS機(フロッピーディスクベース)である。そのため実習は二人一組になるが、今後の更新でひとり一台(Windows機:ハードディスクベース)となる予定である。しかし、そのことだけで教育効果が上がるとは思えない。本来勉強とは孤独な作業であると思っていたのだが、本校の生徒だけかもしれないが、友人数人と学校に残って勉強する生徒が増えてきているのである(家に帰ってからひとりで勉強しているのかもしれないが)。したがって、ワープロや表計算の実習は別にして、CAIソフトは二人一組で利用した方が教育効果が上がる場合もあると考えられる。また、20台強をひとりで見るのでも相当に困難があるのに、はたしてひとりで40台を見ることが出来るかも疑問である。ハード面の整備だけでなく、教諭等の人員の配置も問題になってくるのではないかと考える。
更新時に台数だけでなくハードとOSも新しくなり、ますますオーディオ・ヴィジュアル関係の機能が強化されるが、数学教育のソフトを考えていく上で、空間図形以外あまり必要のないことではないかと思われる。つまり、教育用ソフトが新ハード&OSについて行けていないと感じるのである。新しいものを追い求めることも必要かもしれないが、現在設置されている機種の機能でやり残したことはないのであろうか、無理なのであろうか。本当に新しい機種の方がより教育的効果が上がるのだろうか。疑問である。
ワンポイントでコンピュータを使用したが(短時間のコンピュータ利用)、そのためだけにCAI教室に生徒を入れるのも、移動だけでなく利用後の指導も大変である。目の前のコンピュータに気が散るために本来の授業に集中できなくなるのである。そこで、CAI教室の整備だけでなく、各普通教室に1台ずつのコンピュータの整備も今後要求して行くべきではないかと思う。そして、各教室間をLANで結び、職員室にサーバ機を設置し利用できたらと思う。最終的には学校がホスト局になって、各家庭とパソコン通信(インターネット)出来る環境を整えるべきである。家庭学習やいじめ・非行問題の解決ひいては父母(地域社会)の学校教育への関わり方等に有効利用できると考える。少し話がそれたが、各普通教室に1台の設置が無理でも移動テレビとスキャンコンバータとノートパソコンで代用は出来ると思う(この場合、各階に1組の設置)。費用もそれほどかからないので、すぐにでも実現できるのではないかと考える。普通教室に居ながらにして、ワンポイントでコンピュータを利用する、すなわち、道具として利用する、まさに電子黒板とでも言うべき利用も出来るのではないかと考える。
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