平成4(1992)年:第39回近畿算数・数学教育研究京都大会発表
2.コンピュータ利用について
(1) 開発に際して
コンピュータは特別な道具でなく、あくまでも、鉛筆・定規・コンパス等と同じ道具として扱いたい。また、ドリル型・チュートリアル型のようにすべてをコンピュータが行う(これを考えるのは大変である)のではなく、指導や示唆・ヒントはその場にいる教師が個々の生徒の反応を見て行えばよいのではないか。
(2) 開発の目的
座学だと式の変形や数値の計算が苦手な生徒は授業に参加しにくいという状況があり、また、市販のソフトだと三角関数のグラフを表示させるものがあるが、そのほとんどが条件の入力後、眺めているだけになる。
そこで、「生徒が参加しにくいまたは眺めるという消極的な参加をする」という状況から「生徒がもっと積極的な参加をする」という状況になることを目的とした。
したがって、生徒は条件からどのようなグラフになるかをだけに考えを集中することができるようになり、また、マウスを操作しないとグラフは完成しないので生徒は積極的な参加をするようになる。
そして、このソフトを利用することにより、自分で描けたという気持ちにさせ、学習に対する興味・関心・理解を呼び起こしたい。
(3) プログラムの概要
・条件の入力を行う。(テンキーのみを使用)
・マウスを上下左右に動かしてグラフを完成させる。
グラフ作成には、手動モード(x座標、y座標ともに条件を一致させて点を表示する)と自動モード(x座標を指定すると対応するy座標上に点を表示する)がある。
・グラフを表示したまま次の操作に移るか、グラフを消去してから次の操作に移るか、終了するかの選択を行う。
※詳細は操作マニュアルを参照のこと。
※グラフ作成時に座標平面上を補助線が移動していくが、補助線が下絵の上を通過しても下絵が消えないように工夫してある。
(4) 欠点
・分数や累乗根をそのままの形で利用できない。小数にする必要がある。
例えば、分数式の計算結果を分数にするには、専用のプログラムの開発が必要になる。
・文字の種類や表示位置に限りがあり、教科書どおりの表現ができない。
例えば、「x」は「x」、「x2」は「x^2」のようにしか表示できないので、表示させたければ、専用のプログラムの開発が必要になる。
・本プログラムは、ドット単位でグラフ上の点かどうかの判断をしており、有効桁数の関係で計算誤差が出てしまいグラフのつながらない部分がある。この欠点もプログラムの仕方しだいで何とかなると思うが、学習の妨げになっていない。というのは、「画面の表示能力が640×400ドットしかなく、四捨五入や切捨て等の計算誤差が積み重なり、どうしてもつながらない。コンピュータにも限界があるのだ。」という説明をすると納得するようである。
3.実践授業
(1) 本時までの授業
三角比(復習) | 1時間 |
一般角と弧度法 | 3時間 |
定義と値 | 2時間 |
相互関係と性質 | 3時間 |
グラフ | 5時間(本時はその2時間目) |
4.授業を終えて
生徒の学習に対する興味・関心を呼び起こすことと、授業への積極的な参加をさせることには成功したと思うが、理解させる所まではいけなかったと思う。つまり、グラフのだいたいの形はわかっているが、実際にグラフ用紙上に数値をとってのグラフが描けないのである。
また、画面上のグラフを描き写させる作業を行ったほうが、グラフと条件の関連の理解と実際にグラフ用紙に描かせる時のためには良かったのではないかと思われる。
5.生徒の声
・じゃまくさい。でもきれー。けっこう夢中になれる。でも遊んでる感じ、勉強じゃない。
・グラフをいろいろと自分で楽しめるからけっこうおもしろかった。
・自分で使えるようになったのでおもしろかった。パソコンを使ったほうがわかりやすい。
・グラフをかくことしか頭にない。きれいにかいて点と点の間があいているとむかついてくる。
・自分の好きなグラフがかけて便利でいい。自分で動かせるから、自分がかいているみたいでおもしろい。
・普通の授業よりCAI教室のほうがおもしろいし、楽である。
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