2.授業のねらい
1次変換によってアニメーションしながら図形が変形していく場面を生徒に見せ、興味関心を持たせ、学習に対する意欲をかき立てることを目的としました。
行列の計算はできるが1次変換て何なのという生徒に対して、目で見せて体験させることは大変有効であると感じています。私自身、いま思い返してみるとなぜそんな気持ちになったのか不思議なのですが、内積を習ったときに計算はできたのですが内積の意味ってなんだろうということが頭から離れないために、計算していてもなぜか不安でいったい何をしているのだろうという気持ちが先行してしまい、まともに問題が解けなかったという記憶があります。いまいったい自分が何をしているのかを理解させるということは非常に重要なことではないでしょうか。
3.単元計画
1)2、3年 「代数・幾何」
2)「1次変換」
3)単元の指導計画
項目 | 時間 | 指導(学習)内容 |
---|---|---|
1次変換 | 3(本時) | 変換の意味と変換の表し方、1次変換の定義の学習と意味理解のためのCAI学習。 |
1次変換の合成と逆変換 | 3 | 合成と逆変換の意味と計算方法の学習。理解定着のための問題演習。 |
1次変換とベクトル | 1 | 1次変換の線形性と1次変換を表す行列と基本ベクトルの像の関係の学習。 |
1次変換と図形 | 3 | 1次変換による図形と直線の像の学習。逆行列を持たないときの像の学習。 |
回転移動 | 2 | 正弦・余弦の復習と回転移動を表す行列の学習。 |
写像 | 1 | 写像・合成写像・逆写像の意味の学習。 |
4.授業の展開
謚w習指導案
時間 | 指導内容 | 教師と生徒の活動 | 留意点 | PC利用 | |
---|---|---|---|---|---|
導入 | 3分 | 宿題の解答 | (2 -1/3 4)による猫に図の変換がどうなるか確認する。 | 図が少し異なる。 | 一斉送信 |
7分 | 前時の復習 | x軸、y軸、直線y=x、原点に関しての対称移動を表す行列を指名して答えさせる。 | 使用せず | ||
展開 | 5分 | 対称移動の確認 | 猫の図を利用してそれぞれの変換をし、像の確認をする。 | 繰り返し見せる。 | 一斉送信 |
10分 | いろいろな変換 | 相似変換や恒等変換、いろいろな行列の変換を実行してみせる。(2 0/0 2)(1 0/0 1)(1 -2/-3 4)(4 -1/1 3)等 | 常に(0,0)→(0,0) | 一斉送信 | |
10分 | 像の予測 | 行列が与えられたとき、像の予測をさせてみる。相似変換から始めて発見しやすくし、いろいろな変換で考えさせる。(3 0/0 3)(1 0/0 2)(3 0/0 2)(-1 2/3 -4)等 | 青と赤の線分に注目させる。基本ベクトルの成分であることにはふれない。 | 一斉送信 | |
2分 | 合成と逆の提示 | 縮小変換を続けて行う。元に戻す変換を行う。 | 一斉送信 | ||
3分 | 図形の変更 | 猫の図を河童に変えて実行する。 | 一斉送信 | ||
10分 | 自由学習 | いろいろな行列で生徒に操作させて体験させる。 | 机間巡視 | 個別学習 |
邇タ際の授業風景
前時に宿題で出しておいた猫のミーコの変換後の姿とMOVILを使用してシミュレートした姿を見比べさせて自分のやってきた宿題が正解であったかどうか確認させる。宿題の猫は計算がしやすくなるように中途半端な点は取っていないので画面の猫と少し違っていることを指摘しておきます。少し騒がしかったのですが、数回正解のアニメーションをすることで静かになりました。
次に、黒板に注目させ、前時の復習と言うことで、x軸、y軸、原点、直線y=xに関しての対称移動を表す行列を指名した生徒に答えさせます。答えられない場合は、その変換を表す式をヒントとして書いてあげます。それでもダメな場合は、係数付きで式を書いてあげます。ここまでくるとすべての生徒が正解を答えました。
それぞれの対称移動を表す行列を利用して、猫の像がどうなるかシミュレートしアニメーションで生徒に確認させます。そして、相似変換の実演、恒等変換の実演、いろいろな変換の実演を行いました。恒等変換では、「ちゃんとみていないとわかりにくいぞ」という一言の後、実行しました。こうすることでよりいっそう注意して眺めることになり、自分自身への変換であることを確認する生徒が増えるのではないかと考えました。また、どの1次変換でも原点は移っていないことも確認させました。
ここまでくると、同じことの繰り返しで生徒が飽きてくる頃なので、新たに「像の予想」という問いかけを発して、学習意欲がなくならないように心がけました。漠然と眺めていないで猫の頭がどこに行き、どちらを向いていてスマートになるのかふとっちょになるのか、考えながら眺めるように指示します。行列を変える度に生徒たちはああでもないこうでもないという風に考えているようでした。そうこうするうちに、相似変換に関しては、x軸方向にどれだけ、y軸方向にどれだけと答えられるようになりました。しかし、それ以外の変換は漠然としか分からない様子でした。
たった一人だけ完璧に予想できるようになった生徒がいました。この生徒は画面を眺めているうちに、青い線と赤い線(x軸方向とy軸方向の基本ベクトル)に気づいたのです。この発見は、普通教室の授業ではほとんど不可能で、コンピュータでシミュレートしたからこそできたことではないでしょうか。
合成変換、逆変換という言葉は使わずに、どんどん縮小させていくシミュレーションと変身させた猫のミーコを元に戻す変換のシミュレーションをしました。これは、実演をして見せただけで、後日の授業のために行いました。
猫の図形を河童に替えると生徒たちは新たに学習意欲がでてくるようでした。
最後の10分間は、体験させるということで生徒に自由に1次変換のソフトをさわらせました。
5.生徒の反応
「目で見れて1次変換の意味がよく分かった」という反応が、予想通り1番多かったです。「自分で図形を書いて変換してみたかった」という感想もありました。今後のバージョンアップに期待したいところです。
6.授業を終えて
自由学習の時間は失敗でした。操作ミスで回転変換になってみたり、逆行列のない行列で1次変換してしまい直線になってしまうグループが続出してしまいました。このことは、体験させることも大切ですが、準備のできていない生徒に体験させても意味がないということです。この体験学習は、1次変換を一通り習った後でやるべきことであったと反省しています。
コンピュータ授業ならではと考えられる場面もあったので、一応成功したのではないかと考えています。
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