分数関数グラフ作図支援ソフトウェア


1.はじめに
本校は1学年7クラスで選択科目を多く採り入れた総合学科的色合いの強い普通科単独校です。平成3年3月に、教師用PC−9801DSを1台、生徒用にDXを24台設置しました。
滋賀県の取り組み
本校の所在する滋賀県では、教員がソフトの仕様を考え、業者が開発するという、プロジェクトがあります。現在、高校数学では、平面図形が完成し、ベクトルが業者開発中で、数学T(新課程)の仕様書作成中(私もメンバーのひとりとして微力ながら頑張っています)です。他教科や小中学校に関しても同様の作業が進行中です。
また、CAI設置校のすべてに対してCAI用ソフトウェア購入費が予算化されており、ソフトの整備充実が図られています。

2.コンピュータ利用について
謚J発に際して
授業の中でコンピュータを特別なものではなく、定規やコンパスを使用しているのと同じ感覚で普通の道具として誰でも扱えればなと思います。
迥J発の目的
座学だと式の変形や計算が苦手な生徒は授業に参加しにくいという状況があります。特に分数の苦手な生徒が多いなかで、分数関数となると、始める前から完全に拒否反応を示してしまいます。
そこで、生徒が苦手とする部分はコンピュータにまかせ、生徒は式の入力とコンピュータがグラフを描くのを手助けし、自分がコンピュータを利用してグラフを描いたんだという気持ちにさせ、学習に対する興味・関心を呼び起こし、学習内容を理解しやすくすることを目的としました。

操作について
操作方法で生徒が悩まないように、できる限り簡単になるようにしました。
・STOPキー:プログラム強制終了
・Eキー:グラフの描画終了
・Jキー:グラフの半自動描画
・Sキー:グラフの手動描画
・Zキー:グラフを完成させ終了
式の入力はマウスで行い、グラフも座標平面上の補助線の先の点をマウスで上下左右に移動させるだけで完成します。

3.単元計画
1)1年 数学 「数学T」
2)「種々の関数」
3)単元の指導計画
項目時間指導(学習)内容
分数関数1(本時)分数関数のグラフの形の理解。2通りの式の表し方の理解。
グラフの描き方、漸近線、式変形の理解。
無理関数無理関数のグラフと平行移動の式の理解。グラフの描き方の理解。
逆関数とグラフ逆関数の意味と求め方の理解。逆関数のグラフの関係と定義域、値域の関係の理解。
問題演習理解の定着をはかるための演習。

4.授業の展開
謚w習指導案
時間指導内容教師と生徒の活動留意点PC利用
導入10分操作方法の説明とプリント学習の進め方。例題1・例題2教師卓の画面を生徒に中継し、入力の仕方等操作方法の説明をします。生徒は操作方法の理解と表示されたグラフの理解とプリントの進め方の理解をさせます。一斉学習なので進度の一番遅い生徒に合わせる。教師利用
展開40分いろいろな分数式とグラフの形・2種類の式とグラフ教師は机間巡視をし、示唆・ヒントを個別に与えます。生徒は2人1組になり、配布された2枚のプリントにしたがって4個の問題を画面に表示させ、プリントの座標平面上に描き写し、点線の方程式を求めさせます。問5は式の変形はせずにコンピュータを利用し解かせる。 個別学習となるので生徒の進度に合わせた助言をする。漸近線という表現はしない。生徒利用
邇タ践授業
2枚のプリントを配布し、例題をもとに条件入力の方法を教師卓で操作して、その画面を一斉送信で生徒画面に表示することで説明します(条件入力画面)。このクラスは、2次関数のグラフの時にも利用しており、また、操作方法がほとんど同じであることから、リラックスして授業にのぞんでいる様子でした。
次に、グラフ作成画面に移ります。ここで、画面に表示される情報の説明をします。画面右側に入力した式がグラフ表示色に選んだ色で表示されていること、補助線の先が動点Pを表しており、画面左上にその座標が表示されていること、補助線は通常「赤」で表示されていて、先が式に適した位置に来ると黄色に変化し、自動的に指定したグラフの色の点が残されること、その操作を繰り返すことでグラフが完成すること、画面中央上に式の計算値(Yの値)が動的に表示されていること等を説明します(グラフ作成画面1,2,3)。また、グラフ完成後、漸近線が表示されるので、その方程式についても考えるようにと指示しました。ただし、漸近線という表現とその性質は次の授業で扱いたいので、プリントでは点線の方程式としておきました。
操作方法の説明を終えた後、画面に表示されているグラフをプリントに描き写させ、点線の方程式を書き込ませました。

生徒への指示
@問1〜問4
・マウスでグラフを探すときに、行き当たり張ったりでやらずに、式を見てどの辺に在りそうかなという見当をつけてやりなさい。
・動点Pのy座標と式の値に注目すると点がとりやすくなる。
・問が変わるごとに座標平面をクリアし、同じ問内のグラフは色を 変えて同一座標平面上に表示しなさい。
・描き写した際、色分けできないのでどの式のグラフか分かるようにしておきなさい。
・問1、2、4は式は2型の入力を選び、a、p、k、qの入力をし、問3は1型でa、b、c、dの入力をしなさい。
・問1、4は点線の方程式も求めておきなさい。
A問5
・時間があればやりなさい。
・A群のグラフを表示し、B群のグラフを重ね書きし、一致したら 同じ関数だから、それらを線で結びなさい。

生徒の自主性にまかせる
台数の関係で2人1組で操作するため、一人が式を読み上げ、もう一人が式を入力し、マウス操作をするというふうに役割分担をして作業を進めていきました。この役割が固定してしまっている組と交互に役割を変える組とがありました。どちらの組も少し騒がしくなりましたが、積極的に授業に参加し、意欲的にしかも楽しそうに取り組んでいる姿が印象的でした。
その間、生徒に指示はしませんでした。というよりも、指示するような場面が与えられなかったという方が正しいかもしれません。コンピュータに生徒自身が慣れてしまい操作の質問をしなくても、プリントを見れば、作業が進められたからです。少し寂しい気もしましたが、普通授業でもこのように脇役になるような学習環境にならなければいけないのではないかと感じました(生徒・教師ともに意識改革が必要になってくるでしょうが)。
プリント作成時には、問題数が多すぎるかなと思っていたのですが、授業が終了する時点で、すべての組が問1から問4までやり終えていました。早いグループは問5もやり終えて、自分たちで式を考えて、そのグラフの表示をしていました。
1枚目のプリント左下の問題は、次の時間にやりました。2次関数のときに失敗したのですが、式から放物線のグラフがだいたいどうなるか分かっても、実際にコンピュータを使わずにはグラフを描くのが困難であったのです。そこで、式とグラフの間に表を入れることで、よりいっそう式とグラフの関係が明瞭になり、自分でグラフをノートに描くことの手助けになるのではないかと考えたからです。

5.生徒の反応
・CAIを使うと楽になって自分の力で解かずにコンピュータに頼りすぎになってしまうと思った。
・コンピュータでやると計算しなくていいから良かった。
・何かずっとしてると辛気くさくなってくる。
・今の時代、コンピュータくらい使えないと就職にもひびくと思う。
・先生の話を聞くだけじゃなくて、自分で実験できたから良かった。
・黒板が見にくかった。
・どういう式がどういうグラフなのかということが普通の授業よりよく分かった。
・コンピュータは色などが鮮やかで正確なのでとてもわかりやすかった。
・最初は使い方があまり分からなかったけど、使っているうちに楽しく集中でき授業に取り組めた。
・普通の授業より楽しいし、自然に覚えられるから合理的だと思った。
・関数はちっとも分からないけど、ああいう風に点を結んでできることが分かった。
・グラフがあんなに簡単にできるのでとてもびっくりした。
・すごく楽しかったです。毎回、こんなことをしてくれたら、数学が好きになるのになぁ…。

6.授業を終えて
ほとんどの生徒がコンピュータを使用した授業に好意的でした。何らかの興味関心を持って授業にのぞんでいると思われます。この興味関心をうまく利用して、学習内容への興味関心に、そして、理解と知識としての定着までもっていけたらな、というのが私の正直な感想です。
コンピュータを授業で使おうと言われてから久しいはずなのですが、その割にはソフトに進歩があまり見られないのではないかと思います。自作ソフトは作者の意図が強すぎて使いにくい。市販ソフトは大がかりすぎて生徒の実態に合わない。ということをよく耳にしますし、私も感じています(近頃、状況は変わりつつあるような気もしますが)。
生徒は学習への興味関心の入り口まできているのです。もう一押しすれば、自主的に知的好奇心を満たすために、学習しだすのではないかと思います。
自作市販の別に関係なくすばらしいソフトが現れることを期待し、また、非力ながら私もがんばっていきたいと思います。


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