数学Cへのアプローチ

〜コンピュータでいろいろな曲線を描く〜

学研:New教育とマイコン Apr. 1994

平成6(1994)年:第41回近畿算数・数学教育研究大阪大会発表


1.はじめに
 平成3年3月に、普通教室を改造し、教師用にPC−9801DS1台を、生徒用にDX24台を設置しています。
 平成5年度から、教科は週30時間とし、土曜日には授業をせず、行事や講演および教科・教員個人が提供できる講座を行なっています。

2.土曜講座について
 新教育課程と週休2日制をにらんで始められた講座です。教科の枠に捕らわれずに教師が指導できる内容の講座が3学年合わせて59講座設けられました(平成5年度)。生徒は、そのなかから自分の興味関心のある講座を受講することになります。
 平成5年度は、行事と講演の関係から、1学年に対して、2時間連続の授業を2回(2週に渡って)、計4時間の授業を行いました(平成6年度は2,3年が計6時間で1年が計10時間)。私の受け持った講座は、3学年ともに設けられ、内容はというと「数学C」のいろいろな曲線の入門みたいなことをしてみました。
 今後、「数学C」をカリキュラムの中に取り入れて教えていく参考になればと思っています。

3.講座の計画
 1)1、2、3年 数学 「数学C」
 2)「いろいろな関数」
 3)講座の指導計画
項目時間指導(学習)内容
式で表すグラフィックスコンピュータに慣れさせ、プログラムの入力ができるようにする。色を決める式をいろいろ変化させ、きれいな模様を探させ、式に親しみを持たせる。
プログラムの修正ができるようにする。少し長めのプログラムで、入力の仕方の定着をはかる。
リサージュ曲線と正葉線BASIC言語の命令がどのような役割をしているかの理解に重点を置き、自分の考えで修正ができるようにする。パラメタを入力し、曲線の変化を観察し、どのような性質を持つか考察させる。
観察し、どのような性質を持つか考察させる。
 ※平成6年度は、3時間目に回転と縮小写像を用いて樹木のフラクタル図形を描かせました。

4.授業の展開
謚w習指導案(2時間連続)
第一週
時間指導内容教師と生徒の活動留意点PC利用
導入5分DOS版BASICの起動方法ディスクとプリントを配布した後、コンピュータの起動をさせる。ディスクの上下裏表 
展開5分実習1説明1行づつ命令の説明をした後、入力の仕方の説明。キーロック教師利用
10分実習1入力&実行プログラムの入力と実行。画面中央に縞模様が現れることを確認します。1行ごとにリターンキーの押下を指示生徒利用
5分実習1修正プログラムの修正の仕方を色指定の式を変更することで指導します。生徒利用
25分きれいな模様の探索色指定の式を生徒の思う通りに修正させ、模様を描かせます。教師は机間巡視し、オーバーフローや0ディバイド等のエラーに対処する。式を考え出せない生徒への助言生徒利用
10分休憩
15分実習2について命令は1行に続けて描くこともできることを指導する。ピリオド、カンマ、コロン等を間違えて入力しないように注意生徒利用
35分実習2修正&実行色指定の式の変更やSTEP数の変更をしてみることを指示する。生徒利用

第二週
時間指導内容教師と生徒の活動留意点PC利用
導入3分DOS版BASICの起動方法ディスクとプリントを配布した後、コンピュータの起動をさせる。ディスクの上下裏表 
展開2分実習3説明簡単に説明するにとどめる。深入りしない 
35分実習3入力プログラムの入力をさせる。1行ごとにリターンキーの押下を指示生徒利用
10分リサージュ曲線プリントに観察結果を書き込ませる。生徒利用
10分休憩
10分リサージュ続きまとめるためのヒントを与える。 生徒利用
5分実習4説明と修正方法2行を変更するだけで実習4のプログラムが完成することを理解させる。最初から入力させない生徒利用
35分修正と正葉線の観察プリントに観察結果を書き込ませる。まとめるためのヒントを与える。プリントは提出させる生徒利用

邇タ際の授業風景
 授業の半分くらいがプログラムの入力に当て、その後、実行し観察をするという構成のため、生徒がついてくるか不安だったのですが、プログラムの説明と入力の仕方を説明すると、すべての生徒が、学年を問わず、一生懸命プログラムの入力をし、実行して、コンピュータグラフィックスを楽しんでいました。10分間の休み時間になっても、ほとんどの生徒は休まずにプログラムの修正と実行に熱心に取り組んでいて、2、3人の生徒が席を離れるだけでした。
 きれいなグラフィックスの場合は、一斉送信ですべての生徒に見せました。
すると、
 「わたしもこんなんだしたい」
 「どうやってだしたの」
とかの声が女生徒からあがり、その声に刺激されてか、または、対抗意識を燃やしてか男子生徒はよりいっそうきれいなグラフィックスを熱心に探し求めていました。
 3年生の生徒たちは、かなりCAIでの授業を受けており、3学年の中では一番リラックスして本当に楽しんでいる様子でした。
 2年生の生徒たちは、黙々と一心不乱に取り組んでいる様子でした。
 1年生の生徒たちは、3学年の中で一番緊張している様子でした。三角関数や指数・対数関数をまだ学習していないせいもあるかもしれません。
 3学年共通していたことは、式や数値の入力に飽きてくると、プログラムそのものの改造を試行錯誤するようになりました。思ったとおりに改造できると得意そうでした。
 私の出番は、プログラムの説明をするときと、時たま起こるプログラムエラーの修正に生徒に呼ばれるときぐらいで、ほとんどありませんでした。

5.生徒の反応
3年生
・4時間とは少ない。まあまあおもしろかった。またやりたい。パソコンが欲しくなった。
・プログラムをセットするまでがつらい。
・勉強になったと思う。楽しかった。

2年生
・プログラムのインプットを間違ってしまい、あまりできなかった。もっと講座の時間を増やして欲しいと思った。
・なかなかきれいなおもしろい形がでなかった。
・いろんな絵がでて楽しかった。少し目が疲れた。
・2回目の方が良かった。
・プログラムの入力をするのがめんどうだった。
・最初は難しそうで、できるかなと思っていたけど、けっこう簡単で楽しいと思う。今度はマウスを使ってみたいです。
・1回目,2回目とも大変楽しかったし、きれいなものばかりつくれて大変うれしかった。コンピュータ数学をとってよかったです。
・1回目の時は、どうすればいいのかちんぷんかんぷんでよく分からなかったけど、2回目はだいたい手順も分かって楽しくできた。
・数字を当てはめるだけでこれだけきれいな図形が描けることを知り、驚きました。
・自分でやるのがすごく楽しい。

1年生 ・ぜんぜんおもしろくない。
・ゲームがしたい。思っていたよりおもしろかった。
・プログラムをうつのが大変だった。
・プログラムを最初から入力しといて欲しい。
・おもしろかった。もっといろんなことをやりたかった。
・いろんな形がでてきて楽しかった。
・数字を変えただけでいろいろな模様ができたのがおもしろかった。
・はじめは、”何”とか思ったけど、数を多くするにつれておもしろい絵が描かれていき楽しかった。

6.授業を終えて
 最初9行のプログラムを入力するのにも四苦八苦していた生徒たちが、2回目の授業では26行のしかも1行に複数個の命令が書いてあるプログラムをすらすらと入力できるようになっていたことは驚きでした。言語を学習していくうえで、最初は、生徒の興味をひくような実行結果が得られるサンプルプログラムを与えて入力と修正の仕方を学ばせて、その後、文法などの言語そのものを教えていった方がよいのではないかと思われる結果です。また、興味関心があれば、自ら進んで学んでいくという姿勢が見受けられます。学習内容と生徒の興味関心を結びつけることができるような教材研究が、非常に難しいですが、必要になってくるのではないでしょうか。
 「数学C」を先取りするつもりでしたが、プログラム中の数式、極形式の方程式や曲線の媒介変数表示について指導する時間がありませんでした。機会があれば、深く掘り下げて、もう少し数学的内容の指導をしてみたいですし、そのときの生徒の反応がどうなるかも見てみたいと思います。時間は少なかったのですが、いろいろな関数をコンピュータで教える方法の入門くらいにはなったのではないでしょうか。
 最後になりましたが、指導案を考えていくうえで、矢矧晴一郎氏の「やさしいコンピュータ CGワンダーランド」と文部省の「指導計画の作成と学習指導の工夫」の2冊を参考にしたことにを付け加えておきます。


※参考文献
・「やさしいコンピュータ CGワンダーランド」 矢矧晴一郎著 日本放送出版協会
・「高等学校 数学 指導資料 指導計画の作成と学習指導の工夫」 平成4年5月 文部省 学校図書株式会社

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