GT−Xの特別


@GT−Xの登場

 スカイランMINI HISTORYにも書いてるとおり,C10系スカイラインは,昭和43年7月に登場しました。
 当初はスポーティーなファミリーセダンとして4ドアでデビューしました。
1500シリーズに遅れること2ヶ月。同年9月に,いわゆる「スカG」の愛称で親しまれる「スカイライン2000GT」が発売されました。GT−X秘話「当時の新聞広告」のページもぜひご覧ください。
 先代のスカGに習って,直列6気筒OHCエンジンを搭載するために,ボンネットをいわゆるショートノーズ車よりも延長しているので,独特なスタイルを呈しています。

長いノーズ。見慣れるとこちらが普通に見える  さらに昭和44年2月。伝説の名車となったGT−Rが発売され,サーキット場での活躍がスカイラインの人気に拍車をかけます。
 追い打ちをかけるように,GT−Rの戦闘力アップをねらい,昭和45年10月,シリーズに2ドアハードトップモデルがラインアップされます。(CMコピーは「ハートのあるハードトップ」わかりやすすぎる!!)
 そして,翌昭和46年9月。ストリートモデルの最高グレードとして,我らがハードトップ2000GT−Xが発売されました。
 「燃える魂を,熱いソールを内に秘めたハードトップ,ツインキャブレター130馬力。2000GT−X華麗なる登場。」とのコピーとともに,熱いまなざしを受けてセンセーショナルに登場しました。
 さらに,翌昭和47年3月にはセダンにもGT−Xシリーズが追加されました。同年9月のモデルチェンジまで,大人気を博すことになりました。
 中には,ケンメリ発売後も「箱スカがいい」ということで,ディーラーの在庫車を探してもらって購入する人もいたそうな・・・


AGT−「X」とは・・・


 GT−XのXには,どんな意味があるのでしょうか?GTとの違いはなんでしょう?
 スカイラインの伝統になっているGT−Rのようなホットバージョンは赤,そうでないムード派のGTは青,という色で区別してきました。この色を,各エンブレムなどに配し,オーナーの心をくすぐりました。
 46年にモデル追加されたGT−Xは,そのどちらとも性格(というか開発コンセプト)を異にするため,別のカラーが準備されました。
 装備面での豪華バージョンということで,ゴールドが与えられました。デラックスのXなのか,豪華の「LUXURIOUS」のXなのか,未知のイメージを持たせて「すごいぞすごいぞ」と思わせるためのXなのかは定かではありませんが,それまでのモデルにプラスαの魅力を持たせたグレードとしてGT−Xは誕生します。

微妙な色合いを呈する当時物ピラーバッジ  フロントリアのエンブレムはもちろん,
コンソールの「2000GT」のオーナメント,
ステアリングのホーンボタン
シフトレバーノブ
サイドのGTエンブレム
トランクリッドの「SKYLINE」オーナメント
までもがゴールドに輝いていました。 さらには,
ホイルキャップ
ピラーバッジ(ハードトップにしかないサイドベンチレーターの丸いやつ)までにも専用品が設定され,他のグレードとは一線を画す存在でした。


BGT−Xの装備

 次にGT−Xの装備は,何が違うのかを見てみましょう。
 外装のエンブレム等については前述の通りです。それ以外には,まずエンジンが違います。ツインキャブエンジンです。これについては,次のページでご紹介します。
 ツインキャブエンジン搭載に伴って,アクセルの動きを伝えるのを,GTのようなワイヤーではなく,GT−Rのようにロッドを介しています。これにより,ダイレクト感を増し,エンジンルームのメカニカルな雰囲気を盛り上げてくれています。マスターバック近くから出てくるアクセルにつながるプッシュロッドから,からくりのように巧みに角度を変えながら,SUキャブまで動きを伝えます。
その一連の動きは実に興味深く,メカ好きの人にはたまらない光景に違いありません。
最近の車はワイアーさえもつながってなく,アクセル開度を関知するセンサーとしてのスイッチとしてペダルが働いているものもありますが,それとは対照的な構造といえましょう。

キャブまではロッドでここもちゃんとゴールド。芸が細かい。

 ミッションは,GT−Rが5速ミッション。GTが4速マニュアルとニッサンフルオートマチックの二つがありました。GT−Xでは,GTの二種類に加えて,オプションでポルシェシンクロの5速もメーカーオプションで準備されていました。スムーズな低いギアでの伸びは4速がいいという声もありますが,オーバートップに入れた時の高速走行はやはり快適です。(100km/hの時に約3000rpm)

こちらはメインスイッチ。ケンメリ以降のものととても似ているが,実はかなり違う

 豪華装備の一つとしてGT−Xに標準装備されたものに「パワーウインド」があります。
 これは,45年にハードトップがラインナップした時点で,メーカーオプションとしてGTにもついている車がありました。しかし,GT−Xではそれを標準装備としました。
 パワーウインドになっているとGT−Xと思う人がいますが,そうとは限りません。
 なお,47年に登場するセダンGT−Xには,構造上の都合で装備されていません。セダン発売当時の43年時点での設計では,このような贅沢装備を付けることは想定されていなかったのでしょう。(その当時は,高級車といわれるクラウン・セドグロ等とかにしか装備されてませんでした。トヨタ2000GTにもなかったと言うことは,スポーツ車としてのイメージを持つ車には必要ないと考えられていたのかもしれません。)
 しかしながら,このパワーウインド。新車から50年以上が経過した今,きちんと動く車の方が少ないのではないかと思われます。

こうやってメンテするのでぃす

 私の車も,注油したり,接点を磨いたりしてメンテしていますが,スーイスイとはいきません。(その後に、新しい車のモーターをコンバートする社外品に交換したので、4枚とも何とか上下します。)
 経年変化でモーターが弱っているばかりではなく,可動部分がよれてきていること,配線が古くなって抵抗になっていることなど原因はいろいろ考えられます。我が車の場合は,リアは上がるときが苦しいです。
 そうはいうものの,こんな古い車に後付け弁当箱(三ツ葉社等の)ではないパワーウインドがついているということだけで,知らない人は驚いてくれます。

GTX用はGT系用と微妙に違うので,ワイパースイッチ,ウォッシャースイッチともに違った部品設定になっています

 コンソールボックスには,4本のトグルスイッチがはえています。
 左上からリアデフォッガーのスイッチ。ONにすると,赤い警告灯がつきます。右上はフォグランプ。すでに私の車にはついていませんでしたが,当時はけっこうオプションとしてよくつけられていました。もったいないので,スイッチだけを残しています。
 右下はワイパースイッチ。一つあげてロー,もう一段あげるとハイになる2段階式です。
 そして,左下がウォッシャー液のスイッチで,手前へ倒すとしょんべん小僧が2本出て,ワイパーが自動的に数回往復します。
 ワイパーを立てた位置で止まるようにいじっている車は,このウォッシャー連動機能が効かなくなります。(通常の動作の,どこで止めても最後まで戻りきるオートリターン機能を利用しているため)
 さらに,このスイッチを向こうへ押しやると,GT−Xの装備の一つである「間欠ワイパー」が作動します。
 このスイッチ。GTとは共通ではないこともあって,かなり前から欠品です。壊すと大変なので,慎重に扱っています。しかし,電装系は動かさなくてもだめになるので,時々忘れず動かすようにしています。
 ちなみに,この間欠ワイパーの構造のためか,通常のGTとはワイパーモーターやワイパーリンケージが共通にはなっていません。パーツリストをみるとわかりますが,「ライズアップ機構」と呼ばれるものがついていないからです。(いわゆる,ワイパー動作の「お釣り」があるかないかの違い。そのパーツの違いは,2010年大手術のページに載っています。)リンケージロッドの多くの部分,さらにはワイパーアームまでも実は通常のGT系のパーツとは異なっています。2007年夏に未再生車との比較検証によると,確かに違っていました。ライズアップ機能が無いGT系以外は,停止時の位置が窓枠いっぱいよりも若干上が正しい位置になります。その位置で水平にブレードがなるよう,アームの曲がり角度が,わずかに深くなっています。長さについてはほとんど変わらないので,現物合わせで力業で改造することも可能かもしれません。ここまで書くと,断定的にはいいにくくなりますが,「GT−X百科」トップのカタログからお借りしているブルメタのGT−Xのワイパーは,窓枠に近づきすぎているようにも見えます。(カタログであるので,止めた位置での外観を優先し,撮影用としてこうしているのかもしれません。座間のショールームに展示してある新車同様のGT−Xも,窓枠から少し上にワイパーは止まっており、これが本来の定位置なのでしょう。)

未再生車のワイパー位置
私のGTX1号車。アームは新車時のものの可能性高し

 ヤフオク等で出されているアームは,ほとんどが通常のGT用で「26380−28501」になっています。しかしながら,ライズアップを持たないGT−XGT−Rの部品番号は「26380−28500」がほんとうです。ただし,これまでにはまだ箱入り新品パーツでは見たことがありません。(厳密に言うとオークションタイトルで「GT−R用ワイパーアーム」と書いてあるのは,そのほとんどが偽物(GT用)ということになります。)  
 さらにそれ以外にも,

 内側の取っ手(アームレスト)の形状が大きく豪華になっています。また,それにあわせたメッキを施された芸術的なインナーノブも涙ものです。*ハコスカあれこれ「ドアオープナーの謎」も見てください
 また,GT等,他のグレードの最終型ではふた付き小物入れになってたコンソールのボックスには,3スピーカーの8トラックステレオが標準装備されていました。

幻の純正8トラデッキ

 その上の純正クーラーは,GT−X以外のグレードにも準備されたメーカーオプション品でした。
 また,シートはGTとちがい,クロス張りの暖かみのあるシートになっていました。GT−Rのリクライニング無しのバケットシートはみんなが知っていますが,このGT−Xのシートは,別の意味で貴重なものです。
 他にも,リアガラス下のトレーにもパッドがしいてあったり,運転席側のダッシュボード下アンダートレー(パッケージトレーと呼ばれる)が標準であったり,ドアトリムの一部(下の部分)がカーペットになっていたり・・・多くの豪華装備が盛り込まれていました。(装備によってはセダンGT−Xには構造上の都合などから採用されていないものもあります。)

 このような数々の新しい装備を備えながらも,外見的には三角窓や赤一色のテールなど昭和40年代前半のノスタルジックな香りを残しています。このギャップが箱スカGT−Xの魅力の神髄ともいえるでしょう。
 これらの装備の多くは,現在では軽自動車にさえ付いているものがほとんどです。ハコスカが販売されていた当時,一般のサラリーマンには,普通車そのものがなかなか手が届かなかった時代。GTでも,十分に高嶺の花であったはずなのに,さらに当時の大卒の給料(現在の4分の1程度)の数ヶ月分も上乗せしてGT−Xを購入した人たちは,一つ一つの装備に「持つ喜び」を感じていたことでしょう。
 当然,そのような人々の気持ちに応えるべく,メーカーもコスト的にはあまり合理的とはいえないような手の込んだ部品を設計していたのではないでしょうか。現在の中古車価格には,GTGT−Xの差はほとんどなく,それぞれの個体の程度により値段が付けられています。しかしながら,「X」のグレードの重さをしみじみ感じながら乗り回すのも,ハコスカGT−Xに乗る楽しみ方の一つです。

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