朝鳥明神門入から揖斐川を下った中流域に 森前という場所があるが、ここに朝 鳥明神と呼ばれる古代祭祀場があっ て、冬至の日に朝日に向かい長鳴き 鶏の真似をする儀式がある。これは 明らかに天照の岩戸隠れの再現であ り、天照を死の底から揺りさまして、 よみ返えらせる儀式と考えられる。 神主様の話では4世紀(古墳時代)か ら続けられてきたとの事である。 そして、この祭祀遺跡は揖斐川が 濃尾平野に広がる地点にあり、古代 条理区画(水田の区画)の大元である と考えられる。濃尾平野には11箇所 の条理区画起点があるが、これらは 明神の〆鳥居を元に計測されたもの と言われています。 また、濃尾平野を潤す水源は徳山 郷の東谷・西谷であり、この朝鳥明 神との繋がりを強く感じます。
【門入の神主様】 昭和初期の事ではありますが、美濃徳山民俗誌に「此処には二十三、四年前 までは禰宜株(神官になり得る株)を持った家が五軒あった」とあり、門入の家 数九軒に対し半数以上が神主様の資格を持っていた事になり、朝鳥明神との繋 がりはあったかも知れません。また、日本人なら一生に一度は伊勢神宮参拝を したいとの望みは古くからあって、村人は伊勢講などを創り、毎年交代で正月 に伊勢参宮を行っていたという事である。 (雪で難渋したのが目にみえる様) 門入八幡神社のお世話当番の話が"門入おこし協力隊"資料にあって、その内 容が呪術めいて興味ぶかい。これからすると殆どの村人が祝詞を上げられたよ うである。
〜お宮の世話人〜 ・世話人は、おみくじで決める。 ・和紙に名前を書いて団子状に丸めて、三方(白木製の台)に入れる。祈と うすると和紙が珠々に吸い付く。いくつかくっついたもののうち、1つに なるまで払って一人を選ぶ。1回目に選ばれた者は、禰宜を四年間務める。 ・2回目のおみくじで、責任役員を選ぶ。 → 氏子総代 ・宮の行事などがあると一週間前から嫁と寝床を別にする。 ・肉は食べてはいけない。ただし、うさぎ(小動物)、雉(鳥類)は肉と考 えず、食べても良かった。
【徳山郷の神仏信仰】 徳山郷のような山間地で、水害や豪雪などに悩まされてきた村人の心の中に は、いつも神への願いがありました。それは仏教が伝来してからも神と仏の区 別なしにお願いする対象として存在してきたと思います。過去の色々な資料か ら感じられるのは、揖斐川を挟んで東谷側は泰澄の徳になびいた白山信仰に、 西谷側は熊野、伊勢、丹後の畿内側の信仰が影響しているのではないかと思わ れます。それは後の事になりますが、真宗の宗派にも影響を与えていると考え られます。徳山村史に「本願寺から蓮如が出て、各地の讃門徒を転派させた」 とあり、この年、文明3年に蓮如は吉崎を開いているので信者の獲得に徳山郷 へも来ていたことが解ります。 【冬至儀式と古代(固有)暦】 日本古代を記録した書物に古事記と日本書記がある。内容は似通っているが 大きく異なるのは、古事記には年号が無い(少ない)のに対し日本書記には年号 書かれているのである。これは何を意味しているのか調べて見ると、日本書記 が書かれた西暦656年・天智5年には唐から儀鳳暦という暦が入っていたから、 双方に違いが出たのではないかと思います。古事記は儀鳳暦が入る以前に口誦 で伝えられた各地の伝承等を、後世に纏めて編纂した。 それなら、儀鳳暦の導入前は暦を使っていなかったかと言うと、そんな事は無 く太陽の運行を元に古代(固有)暦を使い農業を行っていたのです。朝鳥明神の 冬至儀式も、この古代暦の一年を区切る(太陽が死から蘇る)儀式だったのです。 これは古代の大王(天皇)の即位が正月に行われたのに対して、儀鳳暦の導入 後は太陰暦のため、太陽の運行とズレが生じて、古代大王の正月即位の原則は 乱れていったと言われています。令和の今上天皇 徳仁陛下の大嘗祭は 2019年 11月22日〜23日に行われました。 この様に見て行きますと朝鳥明神の〆鳥居と冬至を基準にした条理区画設定 は、相当に古い時代のものであったことが解ります。 <日本古代暦の証明 吉村貞司著より>
【門入の朱砂採石と揖斐川流送】 古墳時代の石棺、木棺に辰砂を充填した調度品が多く発見されています。こ の時代は大量の辰砂を使用するのは権力の誇示であったので、墳墓の築造が盛 んな地域より、多くの辰砂生産を求められたと思います。 そして、仏教が伝来して各地に寺院が建てられ、柱や壁、橋の塗料として朱 が使われようになりました。更に平城京に盧舎那仏が造られ黄金佛とするため に大量の辰砂水銀アマルガムが使われました。 辰砂は、そのものが採掘される鉱山もあるが、朱砂を精錬して造っていた鉱 山もありました。門入の場合も採集される鉱石が朱砂でしたので、揖斐川を舟 で流送し、加工ができる場所へ運び、辰砂に精錬したと考えられます。 <古墳時代に墳墓で使用された辰砂の起源より> 門入村へ
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