さぁ,重めのクラッチを踏んだら,シフトをローへ。
ストロークが大きいから,どこへ入っているかわからないと言うことはない。(クイックなシフト感を楽しむというわけにはいかないが) オルガン式のペダルは,スムーズに動くように維持しておかなければ,微妙なアクセルワークができなくなる。アクセルを踏む動作は,他の装備をかいくぐりながら這い回るロッドを介して,ダイレクトにSUキャブのバタフライを動かす。強制的にアクセルを開閉させるためのスプリングで,アクセルを踏んだ感じはかなり重たい。
サイドブレーキを解除しながら,今の車に比べるとミートポイントがシビアなクラッチをつなぐ。L型エンジンの大きなトルクで,エンストの心配は少ない。
ロー・セコまでは,比較的すぐに吹けてしまう。3速あたりから3000を越えるぐらいに回すと,伸びやかな加速(決して背中に強いGを感じる暴力的な加速ではなく・・)が気持ちよくなる。シフト操作でもたつくことがなければ,現在の車の流れを多少リードしてしまう。
ごちゃごちゃした市内では難しいが,ちょっと郊外へ出れば,ゆとりのトルクでオーバートップへ放り込んだままクルージングすることもへっちゃらだ。多少勾配のある坂だけトップ(4速)に戻してやれば,不快な振動を感じることもない。
そんなに大きくはないエギゾーストであるが,足下から聞こえてくるノイズと後方から聞こえてくる排気音で耳に心地よいハコスカの息吹を感じることができる。現代の車に,多少音の出るマフラーを付けても絶対に真似できない微妙な音色である。
とはいうものの,ちょっと音楽でも聴いてみようか。コンソールボックスの木目の蓋を開き,中に取り付けたステレオのスイッチを入れてみよう。
リアスピーカーは,トランクスペースを生かすことができる埋め込み型なので,低音までしっかりと鳴らしてくれる。おまけに,CDチェンジャーも付けているので,ドライブの間中好きな音楽を聴き続けることもできる。ノスタルジックの度合いは落ちるが,音質は8トラとは比較にならないほどハイファイ。(この言葉も死語か・・)ダッシュの上のチューンナップスピーカーがやや邪道であるが,6スピーカーでけっこういい音。
ハコスカ独特のハコスカ臭(いい意味の香り)に包まれて,好きな音楽に包まれて何も考えず走るのは,ちょっとした庶民の贅沢な瞬間。冬とはいえ,締め切ったままは体にあまり良くない。少しだけ空気を入れ換えてみるか・・・
空調しよう![]()