My cars historyC

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 かわいくて,そこそこスピードも出て所有する楽しみはあったホンダZ。しかし,雨漏りやギア鳴きとは違った理由が心をよぎるようになってきた。
 走る楽しみが少ない・・・・
 今の経済状況でこの楽しみを実現するには,ジウジアーロデザインのスズキの軽しかない・・・
 でも先立つものが・・・・10万ぐらいしか手元になかバイ・・・・

 そんな私の目に飛び込んできたプライスカード。『12万!!!!! うそ?』
 本当です。「ん? でも何で角目なんじゃ?バンパーも小さいみたいし・・・」程なく,その車が一世を風靡した「SUZUKIフロンテクーペ」であることに気づいた。
 中古雑誌を開いてみると,軽自動車特集には,まだ360が現役中古車としてたくさん出ていた。(まだ旧車にはあまりなっていなかった・・ スバル360ヤングSSやマツダR360クーペとかはすでにプレミアものになっていたが)フロンテクーペの記事を探してみると・・・『初代セルボのもととなった軽初の本格的クーペ・・・ 卓越したハンドリングとキャブを3連装する37馬力エンジンは2サイクルのトルクも相まって軽自動車の域を超えた・・・・』 みたいな言葉が誌面に踊っていた。
「よし,これしかなかバイ。」その車が並んでいた店の事務所をたずねた。「このきれいで5速ミッションのZを下取りに出したいんですけど,そこに置いてあるフロンテクーペばください。」
 わずかの追い金でゲット!! 若干の排ガス規制を受けたマイルドな550よりはるかにスパルタンな特性を持つエンジンと書いてあった記事に夢を託し,鍵をもらって納車の日がやってた。
 チョークを引いて,エンジンをかけて・・・ 『おおおおっとぉ。背中でガンガンエンジン音がするぞこりゃーー たくましそうな音やねぇ。さすがセルボより9馬力も強かエンジンばい ふはははははふぁふぁっふぁ」そっとギアを入れてクラッチをつなぐ。セルボより確かにトルクフルな感じ。
「いいねぇ。おおおおお。タコメーターのレッドゾーンのだいぶ違うぞー」
「8000rpmぐらいまで回るって書いてあったとに,まだ3000ぐらいでかなり引っ張るぞ・・」
「こいでレッドまで回したら,どがん加速するっちゃろうねぇ・・・」期待で胸ふくらむが,エンジンが温まるまで忍の一文字。
 水温計もあがってきたので,一発フル加速してみっか・・・
 次の赤信号で実験してみよう。「お。点滅。赤になってぇ。黄色,赤。青になるぞ,せーのーぉ」ギュルル・・・と行くはずだったけど,あれ?最初はいいけど,4500rpmぐらいから上は回らんぞ。タコメーターをよく見たら3000(だったかな?)rpmまではイエローゾーンになっている。快適に走るにはこれ以上回して走ってくださいというメッセージであろう。でも,イエローゾーンのあとの本来のグリーンゾーンは,我がフロンテにとっては,イエローゾーンの始まりになってしまっている。
『おいおい。37馬力はどがんしたら出せるとや? ああん?』コクピットに向かって文句を言う私の姿がそこにはあった。
 水冷エンジンではあったが,ファンがなく「デュアルクーリングシステム」とかいうシステム採用!!とカタログには書いてあった。何のこと無い。リアエンジンからフロントにあるラジエーターまで冷却水を持ってきて冷やす(これが一つめ)さらに,水温が上がったら,ヒーターのスイッチが入り,ヒーターコアからの放熱で水温を下げるというシステムである(たぶん)
 ということは,デュアルが作動するときというのは,エンジン温度が異常に上がる暑い日であるわけで,そんな日にヒーターが勝手に動き出し,情熱熱風セレナーデになってしまった室内はどうせろというんじゃ?と思っていた。長崎の稲佐山にドライブに行っているときに,それは起きてしまった。水温がけっこう上がるねぇなどとメータを見て思っていたところ,「暑かねぇ なんか,ヒーターのはいっとるごたんねぇ」
(助手席の人)「何か下からぬっか風の出よるよ」ヒーターのスイッチは当然「OFF」位置。何じゃこりゃぁ。松田優作の叫びが耳にこだまする。車を止めて,車外に避難するしかない。「あちぃぃいいいい」
 次の車を探し始めたのは,それからそんなに時間はかからなかった。
 「形は同じでも,別もんバイ。やっぱいセルボばい。クーラー付きばい。」   ※フロンテクーペの名誉のために後日追記 (2015.5)
 デュアル・・は,「デュアルラジエータシステム」の誤りで,いわゆる通常のラジエータとサブラジエータを直結し,ヒーターが効きやすくするシステムみたいです。結果的に,何らかの理由で夏場にヒータースイッチが入ってしまうと,我が悲劇のようなことが起きるわけです。ヒータースイッチを何も触らずにあの時は情熱熱風セレナーデになりましたので,その部分の事実だけは偽りなしということでお読みください。しかし,純正でそのような乗組員に負担をかけるような機構を組み込んでるとは考えにくいですよね。

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