My cars historyA


 修理と押しガケにもめげず,無理矢理楽しいカーライフを送らせてもらったライフに別れを告げ,遠慮無くデートにドライブに使えそうな車。でも維持費の安い軽,という条件から白羽の矢を立てたのが,当時の軽フル規格の「SUZUKI セルボ CX−G 550」を20万ほどのキャッシュと10万ほどのカーローンで購入。
 360と550のトルクの違い。2気筒と3気筒の違い。4サイクルと2サイクルの違い。FFとRRの違い。4ドアと2ドアの違い。家族も乗れるファミリー軽とパーソナルクーペの違い。排気量のごとくまさに360度ほどの違いがあるセルボ。ふり返ると,とてもいい車だった。(ただ,エンジンがやや弱っていて,パワフルさに欠けていた)
 2サイクル3気筒というと,バイクのGT380などを連想する人も多いだろう。加速はいいが,吹き出す白煙と燃費の悪さが玉に瑕・・・ ところが,SUZUKIは心得たもので,車に搭載されたこのエンジンは,本当に2サイクル?というほど燃費がよろしかった。遠出するとリッター20km走ることもあった。2サイクルの宿命,モーターオイルも一度満タンにすると,嘘のように減らない。宣伝文句の「2サイクル3気筒は,4サイクルエンジンの直6に匹敵するスムーズさ!!」これも嘘じゃない。
 ライフのカタカタカタ・・・というエンジンに比べて,「ぶーーん」といういわゆる『自動車らしい音』がする。
 クーラーも,エンジンパワーをガバッと食うけど,とりあえず涼しげな風が助手席から出てくる。(しかし,このオプションをつけていると,助手席側のフットスペースが信じられないほど狭くなる。しかし,スポーティークーペではそんなことは言ってはいけないのだ。)
 この車の最大の美点は,ウィッシュボーン形式のフロントサスにある。ハンドルのロックtoロックが少なく,実にスパルタンなハンドリングで,低い車体と相まってまるでゴーカート感覚じゃ。
 ホンダライフと同じ「145SR10」タイヤでギュンギュンコーナーを曲がっていく。この小気味よさは,小さい車で大きい車の後ろを追い回す快感を私に与えてくれた。
 ある夜こんなことがあった。長崎市内から長崎半島南端の野母崎というところまでよくドライブに行っていた。週に何回も来るぐらい頭スッカラカンな生活を送っていたので,道路の隅々までよくわかっていた。途中,センターラインも無いバス一台と普通車がかろうじて離合できる程度の道幅のアップダウンの続く場所がある。
 その下りなどは,まさにセルボの独壇場!パワーはないけれど,重力の力を借りて80〜90ぐらいできびきび降りていく。前にテールライトが見える。丸いテール。『ん?スカイライン? 追うんじゃー!!』助手席の友達と気勢を上げながら追撃開始。テールはどんどん近づいてくる。「お!ジャパンの次の新しいヤツたい」さらにアクセルを踏む。「へへへへへへへへへ」(とりつかれたような表情でうすら笑っている)小さなエンブレムまで読み取れる距離に近づいた。『おーーRSターボばい』トランク端っこの「DOHC」のエンブレムが見える。当時「史上最強のスカイライン」と宣伝されていたので,「こういう道では史上最強はセルボの方バイ」などと言いながら海岸沿いまで追い回す。がんばっていたらしいが,いかんせん大きな車体。ヒラヒラとコーナーをクリアーしていくという訳にはいかない。
 結局,平地になり2車線の道に出るまで,セルボの追撃は続き,事実上の勝利を収めたのだ。
 もちろん,道がよくなるとリアをぐっと沈み込ませて100km近く出しているこちらの車に薄い煙を吐きかけながらターボパワーで見えなくなっていった。しかし,そんなことはどうでもよろしい。エンジンで負けても,腕では負けてない(かも?)
 狭い道と坂道が多い長崎には最高の若者の車かな?

 そんなかわいいセルボちゃんとも,別れの日が近づいてくる。それは,突然やってきた。  訳あって,山向こうの市外まで行く用事があり,訳あって通常の体調ではなかった・・・いつも通り慣れた道なのに,ちょっとしたはずみでリアが流れ出した。んんんんんん。RRはケツを振り出すとなかなか止まらないーー。3回ほどカウンターをあてて立て直す努力をしてみたものの,セメントの壁がフロントガラスいっぱいに広がってきた瞬間から後の記憶がない・・・
 鳴り続けるクラクションで意識が戻るまでどれくらい時間が経ったのだろう?
 シートベルトの罰則なんてない時代だったので,シートベルトは,椅子の下にほこりをかぶっている状態。そんな中,3人で乗っていたのに,だれ一人死人も出なければ大けがをしていないなんて,運がいいのか悪いのか・・・(わたしは,意識が混乱して2ヶ月前のできごとをうわごとみたいにしばらくつぶやいたりしていた。「明日○○のレポート締め切りじゃなかったっけ?」みたいな・・・頭を打ったらしく,連れて行かれた警察で吐き気におそわれて便所に駆け込んだりもした。これって立派なケガかな?)
 ドアがやたら開かないなと思ってはい出してみると,あらびっくり,車は横転したらしく,ロールバーもない車体はおにぎりの形に変形していた・・・・ 今となっては笑い話。それ以来,物覚えが悪くなったことと,手の甲に残る切り傷は今の私にあのときのことを思い出させる。

 予期せぬできごとで購入3ヶ月程度で廃車になった初代セルボちゃん。解体屋に引き取られたが,アルミが付いた状態で車体料金と引取料相殺で終わった。その後残ったカーローンを払う虚しさは,この上ないものだった。

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 もうしばらく車なんか・・・ とは思ってたが,友達の助手席に座って走っていると,ムラムラと来てしまう・・・ 初心に戻ろうということで,まだ当時安かったホンダの360で出直すことにする。でもライフのDXにはしないようにしようっと。で,物色していたところ,アラレちゃん効果でステップバンは死ぬほど高い。ライフはまた火噴きそうだし・・・極上品となると20万以上するし・・・セルボで走る快感を覚えた私にライフに戻る気にはなれなかった。
 そんなある日,郊外のガソリンスタンドに「売車」と掲げてあるきれいな車を発見。ホンダ360のもう一つの傑作。バモスじゃないよ。  水中めがねがかわいいホンダZ!!!
 バイトに精出して,この車に次の人生をかけることにする。価格は13万円。オールペン済みにしては安い。(ということは何か落とし穴があることにまだ気づかないでいる当時の私だった) 続く。

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