映画「69」撮影エキストラ参加日記

   
 2003年夏前,佐世保旧車友の会会長さんから,昭和40年代を舞台とした映画のロケが佐世保で行われるけど,その大道具として車を出すつもりはないか,との電話をいただきました。
 人生の峠を過ぎてしまった私としては,自分自身が出るような機会に恵まれることは,まずなかろうと思いましたので,せめて,私の分身「愛のスカイライン2000HTGTX」をスクリーンの中に登場させたいと思い,快諾しました。
 忘れかけた頃,地元のローカルニュースでクランクインの話題が放送され,そういえば,映画の話があったが,どうなったものか??と思っていました。登場するエキストラなどは,募集とオリエンテーションなどがすでに終了していて,ハコスカ銀幕デビューの野望は,夢と消えたか・・・と思われていたその頃,友の会会長さんから改めて電話があり,「9月12日金曜日,休みが取れますか?」という話。一世一代の映画のことであったので,職場の方でもあれこれ工面して,何とか休みが取れるように動き回っていた頃・・
 「台風14号が,宮古島付近で猛威をふるっています。観測史上4番目の風速74mを記録しました」といったニュースが飛び込んできました。進路予報を見てみると,12日前後に九州付近に接近の予報。撮影はどうなるものかと心配していましたが,「12日の撮影は中止」との連絡。仕事の方も休暇を出さずにすみました。

 さて,その後,撮影の日程は「未定」ということで,時間が過ぎていきましたが,忘れた頃に「23日に撮影の予定があるそうですが,朝から大丈夫ですか?」との電話がありました。
 運良く秋分の日で仕事も休みだったので,二つ返事でOK。当日を待ちました。

 9月23日火曜日。雲一つない快晴,ではありませんでしたが,降水確率0%の晴れ。ハコスカの銀幕デビューを祝っているようでした。
 当日朝8時過ぎに,佐世保で一番の繁華街で待ち合わせ。
 撮影現場は,地元で「シューズセンター通り」と呼ばれる昔から栄えていた通りです。
 長さで全国的に有名なアーケード街から数十m離れて並行して走っています。
 現場に着くと,雰囲気を害する看板などがレトロっぽく手直しされたり,当時らしい看板や広告が置かれたりなど,着々と撮影準備が進められていました。
 この通りの傍らに車を停めて待っていると,もう一台のエキストラカー,セドリック号も到着しました。
撮影待機するの図シングルナンバーに変身の図

 しばらくすると,小道具が係の人がやってきて,ナンバープレートを撮影用に付け替えます。
 ご多分に漏れず,いかにも偽物っぽいものに付け替えられます。いちおう舞台は昭和40年代中頃ということで,シングルナンバーになっています。

 8時半頃になると,スタッフから呼ばれ車をセッティングします。最初通りの右側にフロントを向けておいていましたが,「絵」がまとまらないのか,逆サイドにリアを向けてセッティングすることになりました。セッティング煮詰まっていくの図
 8時40分頃,人間のエキストラの皆さんが続々と当時っぽい服装に身を包んで数十人軍団になっての登場です。いっぺんに,通りの雰囲気が変わります。ワンピースやくるんと丸まったヘヤースタイルなどそれっぽく演出されていますが,多少の違和感が・・・ そうだ。日本人の体型がよくなっている!当時の人は,もっと日本人らしいスタイルだった!!(=胴長短足)
 生活様式と食生活の変化による日本人の変貌にちょっと感動。小道具が置かれていくの図

 監督の下で働くスタッフがエキストラ一人一人に位置とどちらに動いていくかという指示を出していきます。それっぽい業界人が,てきぱきと指示を与え,徐々に準備が整います。 エキストラポジション決まっていくの図
 9時頃になると,脇役の役者さんたちが現場に入ってきます。
 このカットは,主人公の二人を全学連風な若者たちに追っかけられるというシーンです。その追いかける役の人たちがスタンバイを始めます。
 エキストラのポジションが決まったところで,その追いかけ役の人たちが一度道を走ってみます。普通に歩いていた人たちが,その騒ぎに気づき両側へとよけていきます。最後まで堂々と真ん中を歩いていたおねーちゃんをつれたNAVY(米兵)も,かき分けながら過激派の兄さんたちが爆走していきます。

 テストも一通りすんで,いよいよ主役クラスの俳優が登場です。それまで特別注意されなかった撮影も,近くのスタッフからやめるように言われます。カメラ付き携帯もダメ。有名な俳優になると,肖像権みたいなものが絡んでくるからか,スタッフにも緊張が走り始めます。

 9時20分頃,いよいよ本番開始。通りの向こうに見える通りの車も一時的に遮断され,本番撮影開始です。「本番はいります」のスタッフ(監督さん?)の声に,それまでとは違った緊張が走ります。最初に妻夫木聡と共演者が通りを走っていき,その後を大声を上げながら過激派っぽいヘルメットなどのいでたちの若者に追いかけられて走り抜けていきます。
 カットはそこまで。しばらくして元の場所にぞろぞろと戻っていきます。たぶん「NG」だったのでしょう。
 「はい本番!」take2です。
 タタタタタタ・・・ 二人が走ってきます。ドドドドド・・・過激派が後を追う・・・角材握ってたけど,車にぶつけるんじゃないぞ!
 また,人々の波は元の場所へ。また撮り直しみたい。
 「本番ーー」take3。  タタタタタタ・・・。ドドドドド・・・「おりゃーー まてーーー!!!」
 また,人々は元の場所へ戻されます。  過激派の兄ちゃんたちは,ゆうに100mを超える通りをダッシュしてくるので,けっこうたいへんそう。主役たちのお化粧直しがあるのか・・・ここでしばらく休みが入ります。
 しばらくして「本番」take4。過激派走るの図(勝手にとってごめん!)  タタタタタタ・・・。ドドドドド・・・「おりゃーー まてーーー!!!」
 「OK」小さな拍手が通りに起こります。
 時間にしたら,20〜30秒程度のシーンでしょうか。最終的なOKが出たのは,ちょうど午前10時頃・・・本番の撮影に入っても40分以上がたっています。

 これだけのシーンを撮るのに,こんなに手間暇かけてやっているんだから,もっと大勢の人たちが出る場面とか,派手な車がぶっ壊されて爆発するようなシーンなど,どれだけの人手かかけられ,何回撮り直し(リハーサル)をするのか・・・ 映画を作るのも楽じゃない・・・
 この日の撮影をのぞき見して一番感じたことでした。

OK直後緊張ほぐれるの図

 撮影が終わると,ものの10分ぐらいで,撮影用に取り付けた看板などを原状に復帰させます。
 町並みは数分間の間に21世紀へと時間が戻されます。ハコスカのナンバーも,5が一つ増えます。
 先ほどまでの撮影が,半分夢だったみたいな,そんな錯覚に陥りそうな素早さでした。
 現実へ引き戻されるの図  終了後,プロデューサーの方から,エキストラ代を頂戴して,現場を後にしました。
 これまでかなりの金をつぎ込んだハコスカ君が始めて稼ぎ出したお金。ご主人様へのささやかな恩返しと思っていますが,どうせまた,この何倍もの金をつぎ込んでしまうんだろうなぁ・・・

試写会レポート

 時は流れて,2004.6.29。ついに映画「69」の招待試写会がありました。
 胸躍らせて夫婦で試写会場を訪れました。会場は,ハウステンボス内にある『ウインズSASEBO』。これがウインズSASEBOだ!!JRA管轄の施設で,場外馬券が買えて,大スクリーンでリアルタイムでレースを見ることができる施設です。まるでヨーロッパの立派なオペラ劇場のようなたたずまいは,「競馬って主催者がかなり儲かるようにできているんだ」と思ってしまうほど豪華なものです。

 さて,試写会では,最初に制作監督と主演の妻夫木くん&助演の安藤くんの舞台あいさつがありました。
 二人が出てきたら,会場はジャニーズのコンサートみたいな歓声があがります。係員の制止も何のその携帯のカメラで撮りまくりです。
 あいさつが終わると,いよいよ映画が始まりました。60年代のSASEBOの香りがプンプンする青春コメディーで,いろいろと考えずに楽しんで見れる映画でした。
 途中,音声が出なくなり30分以上の中断が入りました。間が持たないので,出演したお二人さんが舞台に再登場。予想しなかった展開に,見に来た人は大喜び。カメラをもった人が,どどどーーーーっとステージ前に押し寄せます。
 最初制止していた係員の人も,このときには,アクシデントでお客さんに迷惑がかかってしまったので,撮影も黙認してくれていました。(で,わたしも便乗して一枚ぱちり)勝手にとってまたごめんなさーい。なかなかナイスな二人でした。 舞台あいさつにはなかったぶっちゃけ話なども聞けて,別の意味で楽しい試写会となりました。
 機器が直って,上映再開です。しばらくして(映画の65%ぐらいすぎたころでしょうか・・)我が車が登場するであろう場面が近づいてきました。
 学生相手に高校生の二人が啖呵を切ってしまった。おーーっと。過激派に追い回される。ロケをした場所に逃げ込んだ。さぁ,我が車の横を走ってきた。で,自分の車は・・・・ありました。走ってくる二人の向こう側,人並みの隙間にひっそり7〜8秒程度写っていました。ほんの,ちょこっとです。たとえナンバーがついていなくても全然見えないぐらい,ちょっとのぞいているだけでした。

 ま,しかし半永久的に映画のスクリーンに残ることができたと言うことは,この上なく光栄なことです。69のDVDが出たら一枚買わなければ・・・・

 我が車以外に,初代セドリック(後期型),ブタケツローレル,ケンメリHT,ミゼットなどの旧車が登場します。
 古い車に興味がある皆さんは,ちょっと見てみると楽しいと思いますよ。(でも,1969年に,2代目ローレルやケンメリはなかったはずだけど・・・なんて思わないで,笑って見過ごしましょう。)

 この映画,1969年頃の佐世保を舞台に,当時高校生だった原作者が,実際に母校で「バリ封」(=当時用語で「バリケード封鎖」の略。学生運動世代の人にはおなじみの言葉でしょう。)をしたり,音楽フェスティバルをしたというお話。動機は,一途な若者らしく!?,好きな女の子の気を引きたい!!!。
 そのために,若さで突っ走って青春を謳歌していくみたいなお話です。基本的にはちょいスケベなコメディーですが,当時を知る人にとっては,懐かしかったり,切なかったり,それぞれの思いで見ることができるエンターテイメント映画です。
 コピーの「青春とはエロスとはったりである」を地でいく映画でした。
 ロケ地元人としては,笑って楽しませてもらいました。時に字幕が必要なくらいに,佐世保弁丸出しのせりふですが,佐世保人に言わせれば,主演の妻夫木くんは,けっこういい発音してて本物っぽい。(でも,ほんとうの佐世保弁は(男が話すときは)もう少しワイルドでこてこての方言に思います。役者のお二人さんたちは,さすがにスマート。カナ?)

 けっこう宣伝になったでしょうか? この宣伝に免じて,上の写真の二人の肖像権はおまけしてください。 こいでおわりばい。

HOME


ご意見ご質問などありましたら,掲示板に書き込んでちょ→掲示板はここをクリック