ウサハト研究室/S301クランクウェイト編

初回となる今回の研究テーマは、S301のクランクウェイトの補修についてである。
研究材料は、今年の冬エンジンブローしたS氏のラビットである。S氏によると、突然キックが下りなくなりオーバーホールしたところクランクシャフトのウェイト鉛が脱落してクランクケースで溶けていたそうです。幸いシリンダーとピストンはダメージがなくそのままいけそうでした。
部品取り車からクランクを入手したものの、あまり良い状態で保管してあったものではなさそうで、ウェイトの飛んでしまった方のクランクが状態が良いようなので、補修して再使用することにした。

ここで、問題のクランクを見てみると、ウェイト部にはそれぞれ2つの穴があいている。そのうちの1つは本来、鉛で満たされている穴だ。抜け落ちないよう両サイドにテーパーの面取りがしてあるのだが、長年の使用では不十分なのかもしれない。後期モデルではこのウェイトホールにネジが切ってあり対策が施されているそうである。

穴を鉄棒で埋めて溶接しようかとも思ったが、比重を比べてみると鉛=11.34に対し鉄=7.86 比重差に穴部の体積をかけてみると重量差はなんと60g。
60gという数値を具体的にしてみるとM6のナットが1個約2gだから30個分もあるではないか!飛ばし屋のS氏を思うと、とても無視できるものではない。(設計者が計算し、必要だからコストを惜しまず鉛をいれたのだから当然)
とはいうものの、また脱落しトラブルを繰り返しては元も子もない。ここはしっかり対策を講じておかねばならない。


今回は、ウェイトホールに脱落防止のピンを追加することにした。ピンの径は3mm。ピンを入れることによって生じる重量差は計算上1.1g。今後の安心を考えれば無視できる値だと思う。
外周部よりキリを貫通させ、ウェイトホール内側にもピン先がかかるようにした。
ウェイトホールの位置はクランクピン(大端部)の反対側であるため、クランクにかかる応力には影響しないと思う。
3mmの穴加工のあと、ピンの溶接しろをとります。
ピンを入れます。
ピンを溶接し盛りすぎた部分を削ります
ウェイトの裏側に適当な鉄板を挟みます。
流し込む鉛は釣り具店で入手。8号を8個、合計重量は240g
カセットコンロボンベのガストーチで溶かします。鉛の融点は327度、簡単に溶かすことができます。
いよいよ作業のクライマックス。鉛を流し込みます。

裏側も抜け防止のテーパー部分まできれいに鉛が流れ込んでいます。
念のため、表面張力でテーパー部にかからなかった部分をハンマーでならします。溶けているうちに押さえればよかったのですが…
余った部分の鉛をディスクサンダーで削り取れば完成!

余談ですが、このときナイロン製の研磨用メディアを使うと鉛だけが削れ、便利です。今度「お役立ちGoods」で紹介しますね(^^)