田畑まんど

 「まんど」、あるいは「どんぶや」、「どんぶり」などと呼ぶ盆の行事が、上伊那郡の辰野町あたりから伊那市かけて行なわれている。南箕輪村田畑では、「まんど」と呼び、8月13日から16日までの夜に行なわれている。田畑から段丘の上に向かう坂道を利用して、坂の上から子どもたちが火のついた麦からを振り回しながら坂道を下ってくるもので、下る際に「まんどや、まんど、○○まんど、まんど」と大声で言う。○○の中には、13日は「お迎え」が入り、14日と15日は「なか」、16日は「お送り」という言葉を入れるのである。記録したものは、16日のものだから「お送りまんど」と言っているのがわかる。そして、麦からを焚いていることもあって、麦からが燃えてパチパチ音がしているのが聞えると思う。
 このあたりでは行事のことを「まんど」というが、盆の間に門口で焚く迎え火のことも「まんど」という。両者とも迎え火を意味しているもので、16日に行なわれるものは送り火である。田畑では多くの家が、門口で白樺の木を燃やして仏様を迎えている。
 田畑以外の同様の行事を少しみてみよう。
○辰野町では、子どもたちが炭俵や麦からを各家からもらい集め、麦からの先の方を縄でくくり、それを持って平出や辰野・宮木・小横川などは山の高い所に上り、これに火をつけて「どんぶや、さんぶや」と言いながら頭の上で振り回す。
○箕輪町中曽根では、男の子たちが麦わらでまんどうを1人でふたつずつ作り、中原部落との中間にある原へ行き、中原の子どもたちと追ったり追われたりしてまんど合戦をした。後には屋敷の墓の引導場でやるようになったという。13日を迎えまんど、14日と15日は振りまんど、16日を送りまんどといった。
○伊那市山寺では、子どもたちが麦わらを束ね、これに縄の手をつけたものを持って天竜川の土手に行き、一斉に火をつけて振りまんどをする。「まんど、まんど、振りまんど、迎えまんど、振りまんど」と唱えながら振る。16日の晩には、「まんど、まんど、振りまんど、送りまんど、振りまんど」と唱える。 
 以上は『上伊那郡誌 民俗編』より。