オカタブチ

 南佐久郡川上村原で小正月の14日に「オカタブチ」といわれる行事が行なわれる。この「オカタブチ」とは「おかた(嫁)」をぶつ、という意味ではなく、嫁の座の前面のオクラブチをぶつことをいうらしい。14日の夕飯後、小学6年生のオヤカタが半纏に袴をはき、襷を巻き、5年生以下の家来とともに道祖神のオカリヤ前に集合すると、お参りをしてオカタブチに出発する。オヤカタは御幣を持ち、家来たちがリヤカーに太鼓を乗せて打ち鳴らしながらこの一年に嫁をとった家と、子どもの生まれた家へ回っていくのである。

 新しい嫁の家に着くと嫁さんと介添えの人が並んで、この一行を出迎えるわけだ。オヤカタは庭先から茶の間に上がりこむと、「オカタブチに参りました」と口上を述べる。そしてオカタブチが始まるのである。嫁と介添え人が並ぶまわりを御幣を振り回しながらお祓いをするのである。神棚を中心に貼られている書初めの紙に御幣があたり、それらを振り落としながら回るのである。書初めをすべて振り落とすなどといわれるが、なかなかうまく落とせずに何週も回ったりする。

 オカタブチが終わると、オヤカタたちにはお膳が出され、振る舞いとなる。こうして次の家にまた出発するのである。子どもの生まれた家を回るということはかつては行なわれていなかったもので、嫁が減ったということもあって後になって付け加えられたものという。このことをコブチというらしい。

 似たような行事が下水内郡栄村箕作と旧下伊那郡上村上町(現飯田市)で行なわれている。箕作のものについては、こちらのページ紹介しているので参考にされたい。

 録音はオカタブチの最中のもので、太鼓を鳴らしながら嫁のまわりを回っているところである。唱える言葉などはなく、ただひたすら御幣で書初めを振り落としている。したがって、紙の擦れる音がよく聞こえると思う。

 なお、写真は平成14年1月14日撮影。録音は平成4年1月14日のものである。